「しらせ」ファンネルの謎

タイトルにある「ファンネル」とは船の「煙突」のことです。
船内の動力機関、ボイラーなどから延びる煙路、パイプは数本ありサイズも様々です。これらを集約し外板で覆った構造物が「ファンネル」であり、「化粧煙突」と呼ばれることもあります。
ファンネルは船体の中でも目立つ存在となっている場合が多く、特に商船では「ファンネルマーク」を施すなどデザインに趣向を凝らしています。
下の画像は、2010年9月17日に福岡県博多沖で撮影した九州郵船のフェリー「ニューつしま」です。2本のファンネルには赤色をベースに白文字の「キ」をあしらった会社のマークが標記されています。

さて、2代目「しらせ」の外観において、初代「しらせ」から大きく変わったものの一つとして、ファンネルの数が1本から2本になった点が挙げられます。
下の画像は、2008年4月12日に東京のレインボーブリッジで撮影した初代「しらせ」です。

ファンネルを船体中央ライン上に1本設置する場合と比較して、両舷寄りに1本ずつ計2本設置するメリットとして一般的に言われているのは、通常、船にはプロペラが2軸あってその動力機関も2基あるため、それぞれの煙路、パイプを両舷別々にまとめた方が1箇所に集約するよりは船内スペースの効率化が図れるというものです。
下の2枚の画像は、2代目「しらせ」のファンネルの様子をほぼ真上から見たものと後方から見たものです。気になるのは排気口が左右それぞれのファンネル上面の幅に対して外側半分に寄せ集めたように配置されていることです。これならばファンネルの幅をもっとスリムにできたのではないかと思ってしまいます。

しかし、ファンネル構造の強度上の理由、あるいはファンネル後方のヘリコプター格納庫上に輸送物資、機材を搭載するので、前方からの風除け目的で幅を広くとったなどという理由も思い付きます。
下の画像は右舷ファンネルを前方寄りから撮影したものです。これを見るとファンネル本来の必要幅は、開口部の奥に見える壁面までであるように見えます。

下の画像はファンネルの間の甲板を撮影したものです。画面左奥のファンネル開口部の甲板上に長方形の平たい物体が見えます。約2メートル×2メートル半のこの物体は、艦底の機関室まで貫通するメンテナンス用開口部のハッチです。同様のものが画面右下にも見えます。右舷側と左舷側で前後にずれているのは、2つのハッチの中間あたりが第1機械室(前方側)と第2機械室の境界で、それぞれの機械室開口部となります。ちなみに第1機械室と第2機械室にはディーゼル発電機が2基ずつ設置されています。画像下の「しらせ」見取図を参考にしてください。

※このイラストは「しらせ」一般公開時の配布用パンフレットから引用させていただきました。

このメンテナンス開口部ハッチとファンネルの位置関係で不自然な点に気づきます。ファンネル壁面が開口部ハッチのほぼ半分に被っているのです。実艦の分かりやすい画像がなかったので、現在製作中の「しらせ」模型の該当箇所を撮影したのが下の画像です。このハッチを使用する際は、上からクレーン等で吊るして機材を搬出入するはずですが、これでは使用が困難なはずです。

2015年4月の帰国後に実施されたメンテナンス工事では、下の画像の点線部分で左舷ファンネルの一部を切断除去したうえで、開口部から機材の搬出入が行われました。
また、ファンネル奥側の壁面に垂直梯子(はしご)(右側矢印)がありますが、これにも左側矢印の垂直梯子と同じ高さに踊り場があり、最上部まで垂直梯子が続いています。つまり当初の段階では奥側がファンネルの壁面であったものが、何らかの事情で拡幅され、新たな壁面に垂直梯子が設置されたが、奥側の垂直梯子も残されたのではないかと推測されます。

ファンネルの幅を広げることになった理由として私が考えていることがもう1つあります。
上の画像の左上に写っていますが、「しらせ」のファンネルには後部デッキクレーンのアーム先端を固定する場所があります。アーム先端から垂れ下がったフックはその下の甲板に固定されるのですが、もしファンネルの幅がもう少し狭かったら、ファンネル直後にある減揺タンク(特に右舷側)と干渉してフックの固定に支障が出ることが後で判明したからというものです。

このようなことに想像を膨らませながら「しらせ」の模型を製作しています。

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